洞察

オーストラリアにおけるサステナビリティ報告監査:2025年を振り返って

荒川尚子
執筆者:
insight featured image
概要
  • 2025年は、オーストラリアのサステナビリティ報告に大きな進展のあった1年でした。オーストラリア・サステナブル・ファイナンス・タクソノミーの発表、グリーンウォッシングへの新たな法規制、ならびにAASB S2(気候関連情報開示)およびAUASB(オーストラリア監査・保証基準委員会)基準の改訂が進展の要因となりました。
  • 規制や法整備の動きが加速し、ASIC(オーストラリア証券投資委員会)のガイダンスや財務省によるコンサルテーション(意見募集)、ならびにグループ1事業体を対象とする初の気候関連開示義務が、サステナビリティ報告の在り方を形作りました。
  • 2026年2月〜4月にかけて、グループ1事業体の初のサステナビリティ報告書が公表され、年央にはASICによる所見が示される見通しです。加えて、ガイダンスを通じたAASB(オーストラリア会計基準審議会)およびAUASBからの継続的なサポートが期待されます。
2025年は、サステナビリティ報告と監査において大きな節目の年となりました。気候関連開示義務の初年度に注目が集まったのは当然ながら、それ以外にもオーストラリアのサステナビリティ分野では多くの重要な動きが見られました。

主な動向としては、サステナブル・ファイナンス・タクソノミーの発表、グリーンウォッシングへの新たな法規制、ならびにAASB S2およびAUASBによるサステナビリティ監査基準の改訂が挙げられました。

国際的には、自然・生物多様性リスクへの関心が一段と高まっており、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は2026年10月までに新たな自然関連開示基準を公表する意向を示しました。以下では、2025年の主要な改革とコンサルテーションを月ごとに振り返ります。

  • 1月1日より、12月31日を会計年度末とするグループ1事業体を対象に、サステナビリティ報告の初めての義務報告期間が開始されました。
  • AUASBはASSA 5010およびASSA 5000を公表し、サステナビリティ報告書に対する監査業務の段階的適用および実施基準を定めるために必要な監査基準が整備されました。
  • 政府は、任意のサステナビリティ報告書にも改正後の取締役責任規定を適用するため、会社法改正案の草案を公表しました。
  • ISSBは、IFRS S2の改訂案を公表することを決定しました。
  • ASICはサステナビリティ報告に関する規制ガイダンス(RG 280)を公表し、気候関連財務情報開示の質を規制当局の主要な重点課題と位置付けました。さらに、小規模事業者に対しても自社への影響可能性に注意を払うよう呼び掛けました。
  • ISSBの改訂案と整合性を保つよう、AASBはAASB S2の改訂案を提示しました。
  • 気候変動・エネルギー・環境・水資源省(DCCEEW, Department of Climate Change, Energy, the Environment and Water)は、オーストラリア初の国立生態系勘定と環境価値ビューアを発表しました。
  • アクティブ・スーパーは、投資スクリーニングに関するグリーンウォッシング行為により、オーストラリア連邦裁判所から1,050万豪ドルの罰金を科されました。
  • AUASBは、サステナビリティ監査に関する新しい独立性基準の導入にあたり、実務上の課題に対応するためASSA 5000の改訂案を提示しました。
  • オーストラリア財務省は、サステナブル投資商品のラベリングに関するコンサルテーションを開始しました。
  • AUASBは、ASSA 5010およびASSA 5000のさらなる改訂について検討しました。
  • ISSBは、特定9業種のSASB基準の改訂案(公開草案)と、IFRS S2適用に関する産業別ガイダンスへの付随的改訂案を公表しました。
  • AUASBは、取締役報告書に対する監査の取扱いの明確化と、任意報告書への監査の段階的導入を定めるASSA 5010の改訂案について、意見募集を開始しました。
  • また同委員会は、ASSA 5000に例示的なサステナビリティ監査報告書を追加する改訂案を公表し、意見を募っています。
  • 「2025年財務省法(金融システム強化及びその他の措置)改正法案」は、2025年12月5日付で国王裁可を受け、同日に施行されました。
  • AASBは、2027年1月1日施行予定で、早期適用も認められるAASB S2改訂案を公表する見通しです。

2026年の見通し

2026年2月〜4月にかけて、グループ1事業体による初のサステナビリティ報告書が公表される見込みです。報告主体の多くは非上場の民間企業になると予想されています。

ASICは8月~10月の第2回報告に先立ち、5月〜6月にグループ1事業体の初回報告に関する所見を公表する見込みです。AASBおよびAUASBは、追加のガイダンス資料を提示し、実務の円滑な実施を引き続き支援する予定です。

今後も、サステナビリティ報告と監査に関する最新動向を、インサイトやウェビナーを通じてお届けしてまいります。

本稿は、GTオーストラリアのサステナブル・ファイナンス部門シニアマネージャー、リリー・フォックスの寄稿によるものです。

サステナビリティ報告書の準備や親会社への報告に関する質問や疑問点がある場合は、遠慮なくご連絡ください。