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オーストラリアM&A税務:繰越欠損金を伴う事業の買収

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M&A取引は、それぞれが独自の考慮事項と条件をもたらすため、将来を柔軟に見据えて慎重に特定、または管理しないと、不必要な税務コストをもたらす可能性があります。
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M&A取引における税務事項もさまざまな形をとることができ、資産の種類、市況、経済的圧力、取引の速度とタイミング、買収者または売り手が誰であるかなどによって異なります。 この記事では、税務の最適化と取引の財務的持続可能性に大きな影響を与える可能性のある、税務の側面、考慮事項、および影響について説明します。

繰越欠損金のある事業買収

対象企業が税務上の損失を計上している理由はいくつかあります。 例えば、現在オーストラリアでもテクノロジー企業のM&A取引は活発です。このセクターのほとんどの企業は、コア製品や知的財産に投資して開発している間、長年にわたって税務上の損失を被っています。 適切に管理されていない場合、税務欠損金のある会社を買収することは課題を伴う可能性があります。 対象企業に重大な繰越欠損金がある場合、売り手は、買収者が将来欠損金に起因する税務上の利益を節税効果として得ることができるはずであると期待することが多々あります。したがって、欠損金が回収されたときに買収者に発生する将来の税制上の優遇措置に対して売り手が支払われるように、購入価格を調整する必要があるという主張をする可能性があります。

ただし、買収者が繰越欠損金を実際に利用できるかどうかは、いくつかの要因に依存します。

  • 関連する欠損金回収テストが過去の期間に売り手により管理されており、欠損金が実際に取得時に「利用可能」であるという十分な証拠を取得することが大切です。 対象企業は、買収者による取得時に「所有権の継続性テスト」(Continuity of Ownership Test, COT)が満たされないため、「同様事業テスト」(Same Business test, SBT)を満たす必要があります。 このテストの実行には詳細なレビューと文書化が必要になるため、予想以上に手間がかかります。
  • 対象企業が買収者の法人税連結グループに参加する場合、欠損金に付随する「利用可能な割合」(Available Fraction, AF)を決定する必要があります。 AFは、欠損金を利用できる率を決定します。 AFを計算するには、4年前の対象企業法人税連結グループに関する非常に詳細な情報が必要になります。
  • 欠損金が買収者の法人税連結グループに含まれると、欠損金は今後もCOTの対象となり(新しい最終所有者を参照)、取得後も管理する必要があります。
  • 多くの場合、買収後に多くのイベントが発生し、将来的に欠損金またはAFが損なわれる可能性があります。 たとえば、買収者グループにおける将来の株式保有の変更は、COTに違反する可能性があります。 将来の株式またはその他の買収の注入は、欠損金に付随するAFに悪影響を及ぼす可能性があります。 買収者が将来、欠損金回収テストを満たし、どの期間にわたって節税利益が回収できるかについての保証はないのです。
  • オーストラリアの連結納税規則では、買収者は欠損金を保持するか、資産のコストベースの引き上げを取得するかを選択する必要があります。 さらに、特定の状況では、欠損金を保持することを選択すると、売り手にキャピタルゲインが発生する可能性があります。 これらの結果の影響は、欠損金に付随する税メリットの価値に織り込む必要があります。

上記のとおり、欠損金に関する課題事項はあり、取引で入念に考慮すべきことがたくさんあります。 また、多くの取引において、買収者は税務欠損金へ価値を割り当てません。 多くの場合、欠損金の引き続きは、他の取得資産の税コストベースの削減を引き起こす可能性があるため望ましくありません。買収者は欠損金を「取り消す」ことが選択できます。

税務欠損金のように取引額にも大きな影響を与える可能性のある事項が開始時に考慮されていない場合、取引の終了直前に「M&A取引のストレス」が発生し、取引そのものの遅延する可能性があります。欠損金があり売却を検討している場合、または欠損金のある事業の買収を検討している場合は、これらの問題を事前に解決することが大切なのです。

GTオーストラリアでは、クライアントがM&A取引に関連する税務事項を巧みに管理する支援をしています。取引において最適な税務ポジションに向けて構成されていることを確認し、より良い計画と交渉の手段をアドバイスします。